さあ来い 卒サラ!          ~悔いのないセカンドライフを目指して~

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10万円のリゾートマンション

よしをです。

かつて、全国各地の避暑地やスキーリゾート、ゴルフリゾートなど、

魅力的なリゾート地に、たくさんの別荘やマンションがつくられましたが、

その多くが廃墟化したり、空洞化するケースが目立っています。

80年代のバブル期に建設され、数千万円~1億円以上で取引された、

高級リゾートマンションが、タダ同然の価格で販売されています。

 

リゾート物件というのは、メンテナンスにお金がかかります。

建物そのものだけでなく、

テニスコートや温泉施設、プールなどが併設されている場合、

管理費用は、莫大なものになります。

リゾートマンションの場合、

管理費用には、入居者の積立金が充当されることになっていますが、

長期間、複数の部屋が所有者不明のまま放置されると、

修繕積立金が集まらないため、メンテナンス費用にもこと欠き、

すぐに、施設全体のスラム化がすすんでいきます。

 

最近、リゾートマンションのオーナーに、

「300万円支払ってくれれば、物件を引き取ります」、

と持ち掛ける不動産業者が暗躍しています。

当該の不動産会社は、修繕費用や積立金などは支払うつもりはなく、

頃合いを見て、会社を清算するか、休眠させて、経費を踏み倒します。

その場合、当該の部屋は所有者不在の幽霊物件になってしまいます。

 

破格の安さにつられて、このような区分マンションを買ったら最後、

「負動産」になる覚悟をしなければなりません。

前述のように、幽霊部屋が存在するだけでなく、

管理費用の不足によって、施設の管理は行き届いていません。

部屋を格安で購入した人のなかには、

問題のある住人が含まれている場合が多く、

かれらもまた、修繕費用や管理費を一切支払いません。

物件の目玉である露天風呂には、

体中に刺青を入れた人たちを目にすることも少なくないといいます。

 

このような現実を考えれば、

タダ同然の価格で売られているマンションには、

それなりの理由があることがわかると思います。

入手すれば、毎年、固定資産税もかかります。

転売を考えたところで、

当然ながら、このような物件を処分することは容易ではなく、

たとえるなら、ババ抜きのような物件です。

 

少し前であれば、北海道や東北で、

複数のリゾートマンションをタダ同然で一棟買いして、

外国人向けのパックツアーに貸出して成功した事例も耳にしましたが、

昨今のウイルス汚染の影響で、観光客がいなくなった状態で、

今後、これらのオーナーたちが、生き残れるかどうかは難しいところです。

 

格安のリゾートマンションや別荘地を買ってはいけません。

自分で楽しむためだとしても、お薦めできません。

タダより高いものはないということです。

 

 

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不正投資の代償は大きい

よしをです。

住宅金融公庫が提供する低利率住宅ローン「フラット35」を悪用した

不動産投資家に対して、

契約違反として残額の一括返金を求められるケースが増えています。

投資家のほとんどは実勢価格を上回る価格で物件を購入しているため、

自己破産するケースも少なくないといいます。

最終的に、自己破産者は100人以上になる可能性があると

指摘する弁護士もいます。

 

フラット35は住宅ローンを目的とした制度であって、

投資目的の借り入れは禁止されています。

住宅金融支援機構と提携した民間金融機関が融資する仕組みですが、

1%ほどの低金利で最長35年間の融資が受けられるため、

悪質な不動産投資会社が、

巧みな営業トークで投資家にフラット35のローンを組ませて、

自己居住用と偽って投資物件を購入させる不正が横行しています。

 

住宅金融支援機構の昨年の調査では、不正利用が150件見つかり、

それらはいずれも、金額の異なる売買契約書をつかって

融資額を釣り上げる「二重売買契約」という不正行為を併用していました。

「二重売買契約」とは、契約時に金額の異なる2種類の売買契約書を作成し、

金融機関には金額の高い契約書を提示して、

より大きい融資を引き出すものです。

差額分は裏金として、ブローカーや保証賃料を支払うサブリース業者に渡り、

あるいは、買主の借金返済にあてられていたケースもあります。

投資家はブローカーから、

「入居者がいなくても家賃保証(サブリース)する」と勧誘されていましたが、

その賃料の原資の一部は、二重売買の差額、

つまり、元々自分の借金だったりしたわけです。

自己居住用に見せかけるために、住民票を物件の所在地に移したり、

夜中も電灯をつけたり、郵便物を管理会社に転送させるなど、

居住実態がないことが発覚しないように、

ブローカーが小細工をしていたケースもあります。

 

投資家が借主(金融機関)との契約に違い、

目的外の借入金をした場合は、一括返金義務を負うことになります。

機構は、不正が発覚した150件のケースについて、

一括返金を求めていますが、

これにより多くの投資家が自己破産する可能性があると考えられます。

 

この問題は、

「誰もがやっているから問題ない」、

「借金が賃料で帳消しになる」などと詐欺的な営業トークによって、

投資を持ち掛けた不動産ブローカーの罪も大きいのですが、

うすうす不正行為と知りながら契約した投資家に、

最大の落ち度があります。

投資が自己責任である以上、

投資家は不正の責任を取らなければなりません。

 

 

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事故物件の告知義務について

よしをです。
心理的瑕疵物件(いわゆる事故物件)の告知義務は、
いくつか裁判例があり、一定の方向性はあるとはいえ、
その基準は明確ではありません。

2006年、A氏が所有する東京都内のワンルームマンションの室内で、
入居者が自殺しました。
借り手がつかなくなったことや家賃の減額を強いられることになったことから、
A氏は、
「入居者は物件の価値を減じないようにする注意義務があるにも関わらず、室内で自殺したことは、賃借人としての善管注意義務違反だ」と主張し、
その部屋および隣接、上下の部屋の家賃の減額についての責任も含め、
入居者の母親Bと、連帯保証人Cに対して、
損害賠償を求める訴訟を起こしました。
訴訟の結果、東京地裁は、BとCに対して、
連帯して130万円の損害賠償を支払うように命じました。
(隣接、上下の家賃減の責任は問われず)。
こんな訴訟もあるのかと、ある意味感心しました。

さらに、地裁は、当該の部屋に関して、
賃貸人は、事故物件である旨、告知する義務があるが、
一般的に、自殺による嫌悪感は、時間の経過とともに、
のちに賃貸人が居住することにより希釈するものであると指摘し、
事故後に入居した賃借人が退去すれば、
その後の入居募集に告知義務はないと、踏み込んだ発言をしています。

土地の場合はどうでしょうか。
2006年の大阪高裁の判決では、
その土地に過去存在した建物でおきた、重大な殺人事件の場合、
8年以上経過しても、その土地の瑕疵は残ると認定しています。
建物を取り壊せば、心理的瑕疵がなくなるというものでもないようです。

国交省不動産課は、
告知義務に関するガイドラインの策定を目指しています。
心理的瑕疵の告知範囲や、期間などについて議論されるようですが、
高齢者の孤独死などの自然死について、事故扱いにすべきかどうかなど、
個別事情をどのようにまとめるのか、難しいところもあり、
実効性のあるガイドラインになるかどうかは不明です。

東京地裁の裁定のように、
事故物件となったあと、入退去があれば、
それ以降は瑕疵がなくなり、告知義務もないということであれば、
たとえば、短期間の入退去があったように偽装して、
事故物件のロンダリング行為を助長するという指摘もあります。

ネット上では、事故物件を掲示する民間のサイトがあります。
興味半分で忌避物件をさらしている民間サイトが、
不動産売買や賃貸に影響力をもつのは、いかがなものかと思います。
その意味でも、
早急に、国交省ガイドラインの確定が待たれるところです。


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不正融資を引き出す悪徳商法

よしをです。
昨今の金融機関の不正融資問題などを受けて、
不動産投資の融資基準が厳しくなり、
各銀行は、サラリーマン投資家に、フルローンを認めなくなりました。

しかし、最近、二重売買契約という手口を使って、
フルローンをつける悪徳業者が、暗躍しています。
二重売買契約とは、不動産販売会社と物件購入者の間で、
取引金額の異なる、二通の売買契約書を作成し、
金融機関から融資を多く引き出す手法です。
二重売買契約というのは、
あたらしい手口ではなく、古典的なものなのですが、
金融機関の融資が厳しくなってから、増えているようなのです。

契約書の一通は、本来の取引価格が書かれてある正式な文書で、
もう一通は、実際より高い金額が記載された、架空の契約書です。
金融機関には、架空の契約書を提出して、
融資審査を受けるという手法です。

金融機関は、賃貸物件への融資をおこなう際、
実際には、物件の担保価値に加えて、実際の入居率や、
融資希望者の属性なども勘案して、融資金額を決定します。

担保価値に対する融資割合を、
60%に設定している銀行があると仮定します。
取引価格が8千万円の物件について、
担保価値を8千万円と評価した場合、融資上限額は4800万円です。
一方で、取引価格1億3400万円の架空の契約書を銀行に提出し、
担保価値が額面通りに評価された場合、
8千万円の融資を受けられることになります。
つまり、この場合、融資希望者は、
8千万円のフルローンを受けられることになります。

これには2つの問題があります。

まず、架空の契約書を金融機関に提出する行為は、
私文書偽造になるということです。
最悪、銀行からの融資が中止される可能性があります。

もうひとつの問題は、
過剰な融資を受けることになり、返済の負担が増すことです。
たとえば返済期間を同じとして、
4800万円を借り入れた場合と、8千万円を借り入れた場合では、
返済額は、当然ですが倍近く異なります。

二重売買では、さらに巧妙な手口も使われています。
業者が、本来の売買価格よりも高い金額の契約書を作成し、
金融消費貸借契約と決済の間に、覚書を取り交わします。
覚書には、
「売主と買主の協議により、契約金額から〇〇円減額する」、
という記載がしてあります。
銀行には、高い金額の融資額を申し込み、
融資が通ってから、契約内容を書き直すという手法であり、
但し書きがあるため、私文書偽造に該当しないというのです。
(もちろん、これも詐欺行為に該当します)。

悪徳業者は、物件の入居率をごまかすために、
レントロールを偽造することも躊躇いません。
入居を装うために、
郵便受けに架空のネームプレートを書いたり、
部屋にカーテンをかけておくといった小細工をおこない、
銀行の審査をごまかそうとします。

このような手口で、金融機関を騙して融資を引き出すのですが、
契約さえ取れれば、こちらのものとばかり、
業者は物件を売りっぱなしで、その後は一切フォローしません。

フルローン融資を受けられたことで、
「自己資金が必要なくなった」、などと、安心していると、
返済に耐えられず、一気に破綻する可能性があります。
もともと、その物件は、4800万円の信用しかないと、
銀行が認定しているのですから、
8千万円の返済に耐えられる収益力はないのです。

二重売買が発覚すると、その不動産取引業者は、
融資元の金融機関から、出入り禁止になるだけでなく、
当該の金融機関以外にも、ブラックリストが回るのが通常です。
しかし、これらの業者は、会社や代表者の名義を変えて、
何度でも蘇ってくるので、きりがありません。
買手側も犯罪行為に加担することになることを、
自覚しなければいけません。


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資金洗浄の温床

よしをです。
資金洗浄マネーロンダリング)は、
非合法に獲得した金を、合法的に稼いだように見せかけるプロセスです。
そのポイントは、金の流れを追跡されないようにすることであり、
資金洗浄を企む者は、国や行政を欺くために、いろんな手口を考えます。
また、かれらは、税金逃れの手法についても、
さまざまな工夫を凝らしています。
映画「マルサの女」で、脱税をもくろむ経営者に、
1億円当選した宝くじを、1億1000万円で売るという

エピソードがありますが、これなどは、所得税逃れの手法です。

資金洗浄に、不動産取引が使われることがあります。
非合法な手段で得られた汚れた金(現金)で、不動産を購入し、
不動産を担保に、金融機関から融資を受けて、キレイな金に交換します。
あるいは、しばらく保有して、適当な時期に、その不動産を売却します。
もし、売却によって、多少の損失が出たとしても、
汚れた金をキレイな金に換えられるのですから、
この売買は、資金洗浄者にとって、充分に価値があります。

世界中の政治家や富裕層の、資金洗浄や税金逃れに加担した、
いわゆるパナマ文書でも、不動産売買の手口が使われました。
富裕層の資金洗浄で暗躍したコンサル会社は、
顧客にペーパーカンパニーを設立させて、高額な不動産を購入させ、
あるいは、コンサル自らがペーパーカンパニーを設立して、
不動産ファンドに出資を募る手法で、顧客を集めました。

バミューダパナマには、税金がありません(タックスヘイブン)。
そのかわり、LLC(有限責任会社)の開設手数料を徴収し、
外国企業の誘致をおこなっています。
悪徳コンサルや資金洗浄者は、
経済実態のないLLCを通じて、不動産取引をおこない、
資金洗浄とともに、不動産取得税や法人税を節約しています。

日本では、IR(複合型リゾート)と称して、カジノ誘致をすすめています。
マスコミでは、ギャンブル依存の問題に注目が集まっていますが、
カジノにおける資金洗浄や脱税の懸念は、ほとんど語られていません。

カジノでの資金洗浄は、不動産などを介在して迂回せずとも、
ダイレクトにおこなうことが可能です。
たとえば、特定客や身内に大勝ちさせて、
資金をアンダーグラウンドに流すとか、
運営側に還流させる手法があります。
これは、決して杞憂ではなく、
マカオシンガポールのカジノで、
マネーロンダリングが横行しているのは常識です。

収賄の逮捕者が出るなど、もはやいわくつきのIR法案ですが、
2020年代半ばに、カジノを含む複合施設の開業を目指すことに関して、
日本政府に、方針転換する動きはありません。

外国人に観光誘致をするために、カジノが必要なのでしょうか。
そんな施設などなくても、日本には、魅力的な観光資源があります。
個人的には、カジノの是非を語る前に、
私設カジノともいえる、パチンコホールの規制を強化してほしいし、
国会議員が収賄で逮捕されるような状況で、
カジノプロジェクトが国民の賛同を得られるとも思いません。


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どっちもどっち

よしをです。
TATERUは、
2006年に、株式会社インベスターズという商号で事業をスタートし、
アプリではじめるアパート経営をメイン事業に、
提案、建築、管理までを一括でおこなう、
アパート経営プラットフォームで、急成長している不動産企業です。

昨年、TATERUが、投資用アパートの融資にからんで、
オーナーの銀行預金残高を改竄して、
銀行に提出していたというスキャンダルが、明るみに出ました。

TATERUの営業マンは、40歳代のサラリーマンAさんに、
「自己資金ゼロでスタートできる」、と謳って投資をすすめ、
1億円の新築アパート(9室)の購入に対して、
35年のフルローンによる融資を斡旋し、契約が成立しました。
融資をしたのは西京銀行で、金利は2.5%、利回りは6.4%でした。

銀行の審査の前に、Aさんは、TATERUの営業マンから、
「メインバンクの履歴データがほしい」、という連絡を受けました。
残高が20万円しかなかったので、Aさんは提出を躊躇しましたが、
しばらくすると、銀行融資が下りた旨、営業マンから連絡が来ました。
不審に思ったAさんが、西京銀行に問い合わせをすると、
なんと、自分の銀行口座の残高が、
20万円から620万円に改竄されていたというのです。

残高改竄の報告は、Aさんのケースに限りません。
投資家Bさんの、C銀行の口座残高は4万円から300万円に、
D銀行の口座は、17万円から600万円に改竄されていました。
TATERUは、Bさんに、合計900万円の自己資金があるように見せかけ、
改竄された残高を元に、西京銀行が融資をおこなっていました。

TATERUの売上は、年々右肩上がりで、
少し古いデータですが、2017年には700億円近い売上があります。
融資をおこなった西京銀行も、
2018年3月決算において、7期連続の増収増益で、
貸付残高も、過去最高を記録しているそうです。
TATERUの融資の大部分が、西京銀行だったという情報もあり、
両社が合意のうえで、
不適切融資を繰り返していた可能性も指摘されています。

それにしても、西京銀行の融資の審査は、あまりにも緩すぎます。
フルローン1億円に対して、自己資金620万円は少なすぎるのです。
Aさんの給与収入や社会的信用にもよりますが、
貸付額の30~40%(3000~4000万円)の預金残高がないと、
普通は、融資が通らないように思います。

Aさんに紹介された物件を分析すると、
満室時の家賃収入が月58万円、銀行への返済は40万円で、
管理料を差し引くと、手残りは15万円を切ると思われます。
しかし、9室のうち、2室空けば、即赤字になる状態ですから、
常識で考えても、年間で黒字を出すことは難しいでしょう。

Aさんは、契約内容に瑕疵があるとして、契約を解除しました。
キャンセルできたのは幸いでしたが、
そもそも、貯金が20万円しかないような人は、
アパート投資など、やってはいけません。

もし、契約が成立していたら、どうなっていたかというと、
購入時の諸費用のほかに、
物件購入後、半年後に不動産取得税の請求がきます。
約100万円になりますが、まず、Aさんは、これが払えません。
さらに、翌春には、固定資産税の請求もきますが、
こちらは、初年度は、175万円程度になります。
すなわち、初年度で300万円弱の税金を支払う必要がありますが、
その財力がないAさんは、初年度で投資が破綻してしまいます。

TATERUでは、口座改竄の不祥事に対して、特別調査委員会を設置して、
再発防止に努めるとしていますが、
改竄は、一部の営業マンではなく、組織ぐるみだと考えざるを得ません。
さらに、銀行残高の改鋳は不祥事ではなく、犯罪ではないのかと、
疑問に思う次第です。

破綻を承知のうえで購入をすすめる、営業マンもすごいですが、
自己資金ゼロの空手で、1億円の物件を購入できると考える投資家も、
ある意味すごいと思います。

どっちもどっちです。


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幽霊不動産のメカニズム

よしをです。

田舎で一人暮らしの親が亡くなり、
自宅を処分しようにも、買い手がつかないケースがあります。
相続しても、資産価値はほとんどなく、
固定資産税がかかるだけだとすれば、
相続人は、相続放棄を選択することができます。
相続放棄をすれば、プラスの資産もマイナスの資産も、
一切引き継がなくてもよいのです。

しかし、残った空き家の問題は解決しません。
民法によれば、相続放棄をした人は、
あらたに相続人となる人が、相続財産の管理を開始するまで、
管理を継続しなければなりません。
要するに、当該不動産の引き取り手が決まるまで、
結局は、相続人の誰かが管理しなければならないのですが、
どのみち、売れる見込みはなく…。

これらの不動産が、「負動産」といわれる所以です。
1円とか100円で売られている不動産は、こういった負動産です。
思わず、飛びつく人もいるかもしれませんが、
所有しているだけで、税金がかかりますから、
田舎への移住を考えているといった事情でもない限り、
ソーラー発電所にでも転用できないような土地であれば、
購入はお薦めしません。

この例のように、当該の不動産が、
相続対象であると認識されている場合は、まだましなほうで、
田舎に行くと、もともと登記がされていない家に、
何世代にもわたって、子孫が住み続けているケースがあります。
こういう家は、代替わりしても、相続税は一切支払われておらず、
固定資産税の請求先は、
50年も前に亡くなった、明治生まれのおじいさんだったりします。

固定資産税の請求は毎年届きますから、
おそらく、その家に住んでいる子孫が支払っています。
誰が持ち主であっても、
正常に納税されていれば、税務署は文句をいいません。

その子孫が家を離れると、
誰もいなくなった家に、税金の請求が届きます。
その結果、税金が支払われなくなってしまうと、
税務署は、もうお手上げです。
住民票(戸籍簿)と税務署の名簿は、連動していないので、
誰に税金を請求していいのか、税務署はわからなくなるのです。

明治生まれの名義人から数えると、
相続人は、100人以上にもなるでしょう。
税務署が、運よく、相続人の一人を確認できたとしても、
その人に、税金の支払いを強制することは難しいのです。
現在、その人は、不動産の名義人ではないし、
相続放棄されてしまえば、どうしようもなくなります。

登記簿は、不動産の持ち主を証明する書類です。
不動産の売買による名義変更や新築の場合は、登記は必須ですが、
もともと登記のない不動産に、登記する義務は課されていません。
したがって、
このような、持ち主不明の幽霊不動産が生まれるわけです。

国の法制審議会は、不動産の相続に際して、登記を義務付け、
登記をせず、不動産を放置した場合は、過料を科す方針です。
しかし、これによっても、
すでに登録のない不動産の所有者を、特定することはできません。
さきほどの田舎の家の例をとれば、
140歳の老人が住む家が存在することになっているわけですから、
登記の義務化とともに、
所有者の生存確認をしないと、問題は解決しません。


今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。