趣味について⑦ ~京都の悪質骨董商とのトラブル①~
よしをです。
以前、虎図を求めた京都の骨董店に、
李朝の民画を求めて、その後何度か訪問しました。
店主は、陶磁器についての知識は、ほとんど的外れで、
ただ、愛想だけがいい、といった調子です。
店主との世間話のなかで、
朝鮮の民家の入り口に貼られている、護符(符籍という)の話題になりました。
短冊状の薄紙に書かれた、墨一色の版画の札です。
文字だけのもののほかに、
大変興味深い、ユニークな図柄が多く見られます。
そんな符籍のモチーフの中に、
兎が長いキセルでタバコを吸う図柄があります。
図録でしか見たことがありませんが、大変かわいらしい兎です。
兎は多産なので、
一族繁栄を祈願して、札を門に掲げていたのだろうと想像します。
長年、屋外で雨風に当たっているわけですから、
古い符籍は、ほとんど現存しないと思いますが、
わたしの干支が兎だということもあって、
もし出物があれば、多少の無理はしても、入手したいと考えていました。
そこで店主に、
「符籍でなくともいいので、兎をモチーフにした古画が入ったら教えてほしい」、
と伝えたのが、ケチのつきはじめでした。
一週間後、店主から手紙が届きました。
「符籍ではないが、兎図を入手したので買ってほしい」、
とあり、写真が同封されていました。
兎が二羽、長いキセルでタバコを吹かしています。
絵は上手でしたが、完全な贋物です。
わたしは、北朝鮮経由で、かなりの数の民画の贋物が、
日本に入ってきているという情報を得ていました。
この贋物は、古い紙のうえに、あたらしく絵を描いたもので、
絵の具の不自然な発色で、作品があたらしいものであることが
すぐにわかります。
また、この種類の贋物は、
北朝鮮からの「掘り出し物」をアピールしたいためか、
なぜか、例外なく、作品に折りたたまれた跡があるのです。
店主が意図的に贋作を売りつけようとしているのか、
それとも、目利きができないので、贋作と知らずに売ろうとしているのか、
わたしは計り知れず、というよりも…、
ここで贋作の指摘をすると、
「もしよい品が入ったときに、優先的に紹介してもらえないかもしれない」、
というスケベ心に惑わされたことにより、
「コンディションが悪いので買えない」、
という返答をすることになったのです。
手紙を書き、送りました。
さあ、これで、トラブルに火がついてしまいました。
愛想のよかった店主が、別人に変身します。
長くなってしまったので、続きは次回にて。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。