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民放テレビ局の将来② ~必然のガラガラポン~

 よしをです。

 

以前、このブログで、

新聞社の、お寒い現状について、お伝えしました(「新聞社の闇」を参照)。

現在600万部と公称する朝日新聞の発行部数は、

一定のファン層がいることを考えると、

将来的に、200万部程度に落ち着くのではないかとみていますが、

それでも、

朝日新聞が、経営的に苦境に陥るところまではいかないと思います。

その理由は、以前も申し上げたように、

かれらは莫大な不動産を保有しているからです。

 

民放も、ほかの視聴メディアやネット広告との競合激化により、

長期的には、広告収入を減らしていきます。

東京キー局は、都内に大きな不動産資産を保有していますが、

全国各地に不動産を保有する、新聞社ほどではありません。

したがって、かれらには自己防衛のために、

身を切る改革が迫られています。

キー局の足かせとなっているポイントは、大きく2つあります。

 

①制作費(あるいは人件費)

②系列地方局の経営問題

 

それでは、今回も、順に説明します。

①について

非常に特徴的なので、

日本のテレビ局と、アメリカのテレビ局を比較してみます。

アメリカのテレビ局(3大ネットワークなど)は、

ニュース以外の番組を、自社制作しません。

ドラマやバラエティ、ドキュメンタリーなど、さまざまな分野の番組は、

制作会社が制作し、テレビ局は、番組を選んで買うだけです。

アメリカのテレビ局は、

報道部門以外、放送枠を提供することが、主な業務なので、

社員は、ほとんどが管理部門に限られています。

 

一方、日本のテレビ局は、基本的に、番組は自社制作します。

プロダクションに発注するケースもありますが、

あくまでも、テレビ局の下請けとして制作するということで、

アメリカのように、プロダクションが制作した番組を、

マーケットで自由に買い付けられるというシステムではないのです。

 

日本の民放は、プロダクション部門を内製化しているため、

制作費をコントロールすることが難しいという特徴があります。

制作に関わる人件費や、タレントフィーに至るまで、

すべて自社で管理しなければなりませんが、

最大の足かせは、人件費です。

 

東京キー局の社員年収は、

30~40代の中堅層で、1200~1500万円にもなります。

こんな高い給料のスタッフで番組を作れば、

一体どれだけの制作費が必要になるのか。

景気のいい時代なら、それでも大丈夫だったのでしょう。

しかし、時代は変わりました。

民放は、制作スタッフを、

グループ子会社や外部プロダクションへ、切り替えています。

しかし、既存の社員をクビにできるわけではないので、

いずれにしても、かれら高給社員の人件費を、

稼がなければならないことには、変わりはありません。

 

②について

東京キー5局の2018年3月期の決算は以下の通りです。

 

フジメディアHD (売上6465億円 最終利益249億円)

日本テレビHD (売上4236億円 最終利益374億円)

TBS HD    (売上3619億円 最終利益171億円)

テレビ朝日HD (売上3025億円 最終利益158億円)

テレビ東京HD (売上1471億円 最終利益60億円)

 

ホールディングスの決算なので、

テレビ局だけの収支ではありませんが、すばらしい決算内容です。

ただし、フジテレビ・TBSは、テレビ単体では、厳しい内容です。

しかし、それでも、この決算から類推するならば、

東京キー局は、本業以外の多角経営によって、

中期的にも、何とか乗り切ることができそうです。

 

一方で、東京キー局が抱えている爆弾があります。

それが、系列地方局の経営問題です。

2017年度の民放決算では、

最終赤字となった局は、全国で2社でした。

しかし、今後、赤字転落する民放は、確実に増えていきます。

 

たとえば、東北地方の某局の、2017年度決算は、

(売上35億円) (営業利益1.3億円)であり、

ギリギリ黒字を維持した形でした。

今年度は、テレビCM景気が低調だといわれているので、

この某局や、同じような規模の地方局(エリア人口100万人未満)は、

赤字転落する可能性が高くなると思います。

 

これから社屋を更新する地方局や、

10年ごとに必要だといわれている、

放送設備の大規模更新(10億円単位)を控えた局に関しては、

上記の東北某局よりも規模が大きい、

中堅規模の局(エリア人口200万人規模)についても、

やはり同じように、赤字転落する局が出てくるでしょう。

ネット媒体の浸食などにより、

地方民放の収支は、中期的にも、悪化することはあっても、

向上することは、考えにくいのです。

 

「全国の視聴者が、平等に、放送サービスを受けるべき」、という、

国の方針により、

ローカル局が開局する動きが、平成になってから、活発になりました。

「各県に4系列局の視聴可能」を目標に、

いま考えれば、収益を度外視して、

これまで県内に2局とか、3局しかなかった過疎地に、

新局が続々と設立されました。

いわゆる「平成新局」といわれる地方局で、

開局当時は、儲かると思っていたのです…。

これらの新局は、この1~2年のうちに、例外なく赤字に転落します。

 

苦境に陥ったローカル局を、誰が救済するのか。

これが、民放最大のテーマなのです。

はたして東京キー局が、系列保持のために赤字会社を引き受けるのか、

あるいは別の座組で合従連衡していくのか。

放送法改正とともに、一気に再編成が加速していきます。

 

いろいろ端折ってお伝えしましたが、

民放再編成は、メディア界にとって、

以前お伝えした、地方銀行再編以上の激震になることは、

間違いなさそうです。

 

 

今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。