くらわんか
よしをです。
タイトルを見て、何の話かわからないと思いますが、骨董の話です。
江戸時代も後期になって、焼き物は、陶器から磁器に変わっていきました。
本題に入る前に、まずは、この2つの違いを説明します。
(陶器)
・自然に採取した粘土を材料にしており、叩くと鈍い音がする
・焼成温度が低い(800~1200度)
(磁器)
・粉状にした陶石を材料にしており、叩くと高い澄んだ音がする
・焼成温度が高い(1200~1400度)
このほかには、陶器・磁器の材料を混ぜ合わせて作陶した、
半陶半磁といわれるものがあります。
くらわんかとは、江戸時代に使われた、庶民の雑器であり、
長崎県の波佐見焼、もしくは愛媛県の砥部焼であるといわれています。
その名前の由来ですが、
江戸時代、淀川を往来する船を、三十石船といい、
京都の伏見と、大阪の天満橋の間を、頻繁に行き来していました。
その三十石船に近づいて、
乗客に、「くらわんか」と声をかけて、飲食物を売っていた小船がありました。
これを、「くらわんか船」といい、
磁器の食器(くらわんか椀)で、食べ物を提供していました。
これらの光景は、東海道中膝栗毛にも描かれ、
落語の題目(「三十石」)にもなっています。
食器は回収するのが基本なのですが、
船の上のことですから、川の中に落としてしまったり、
酔客が、川に投げ捨ててしまうことも多かったようです。
現代になって、淀川を整備した際、大量のくらわんか椀が、出土しました。
伊万里焼の蒐集ブームとともに、くらわんか椀にも注目が集まり、
大阪の骨董店では、くらわんか椀を専門に扱うところもあります。
大きさは、ご飯茶碗より一回り大きいサイズで、
汁物を入れるのに、ちょうどいい大きさです。
器の出自にロマンを感じて、
わたしも大阪赴任時に、くらわんか椀を求めました。
白磁にコバルトで模様が描かれていますが、微妙に柄が違っています。
値段は、1客2~3万円程度。
正直、結構、高いです。
見た目は、そこらにある、伊万里の新物茶碗と変わりません。
わたしのような目利きのない人間には、真贋判断ができないので、
店主を信頼して、求めるしかありません。
柄の微妙に違うものを10客揃えました。
よく見ると、多くの器に細かなスレ(擦り傷)が入っていて、
実際に使われていたことがわかります。
200年ぐらい前、船に乗っていたのは、
商人それとも、侍? もしくは、大阪見物の旅行者?
この椀で、何を食べていたのかな…。
本当は、普段使いするのが粋ですが、
値段を考えると、いかにもモッタイナイので、
使わずに、棚の奥にしまってあります。
元はと言えば、捨ててしまうような雑器だったのですが。
骨董蒐集と貧乏性は、相性が悪いです。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。