ポカ
よしをです。
年齢とともに、物忘れも呆れるほど多くなりましたが、
わたしは、若い頃から、うっかりミスが絶えませんでした。
たとえば、高校時代には、理論としては理解しているのに、
単純な加減乗除の計算を間違えるうっかりが絶えず、
数学のテストで、何度も痛い目にあったことを記憶しています。
父親からのアドバイスは、「滝に打たれろ」でした。
しかし、うっかりミスは、メンタルの強弱とも関係なさそうにも思え、
「ミスも実力のうち」、と、半分諦めの境地にありました。
しかし、頭脳を駆使するプロフェッショナルの世界でも、
人間である限り、ミスは避けられないのです。
うわゆる、ポカというやつです。
たとえば、将棋の場合、外に現れるのは、一手の指し手だけですが、
一手の背後には、無数の変化が検討されています。
指し進めるとともに、変化の数は無限大に広がりますが、
ポカは、集中が途切れた瞬間に、発生しやすいのです。
わたしの好きな升田幸三名人の、ポカについてのエピソードが、
大変面白かったので、ご紹介します。
苦戦の将棋を耐えに耐え、ようやく勝ち筋に入ったと感じた瞬間、
駒を只捨てするというポカを指してしまい、頭に血が上って投了した。
ところが、終局後の感想戦で、対局相手から、
この局面でも、まだ自分が有利であるという指摘をうけて、呆れ果てた。
勝利を確信して、ふと気が緩んだ瞬間に、
いままでの脳内にあった映像が消えてしまい、
目の前に映った一手を、刹那的に選択してしまった、
という現象なのではないかと思います。
升田さんの将棋は、天才的だと評されることが多いのですが、
鋭い切れ味の手を指すかと思えば、
ときどき、考えられないような大きなポカをやってしまう。
これが、かれの将棋の魅力でもあるのですが…。
反対に、同時代のライバルであった、大山名人は、
非常にポカの少ない棋士でもありました。
升田名人と比べて、大山名人のほうが、
安定的な結果を残せたのは、当然のことだったでしょう。
平成の大名人、羽生名人は、
「どの場面で、勝ちになったと思いますか?」
という質問に対して、
ほとんど、終局手前の局面を答えることが多いといいます。
これは、自然と身についた、ポカを出さない制御方法なのでしょう。
(もっとも、その羽生名人にしても、ひどいポカをやることがあるのです)
プロの勝負師の世界にあっても、ケアレスミスは避けられないということです。
われわれ凡人のポカは、どうすればいいのか。
答えが出ぬまま、50も半ばを過ぎてしまいました(汗)。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。