エボラ出血熱と食糧問題
よしをです。
ウイルス感染症のなかで、出血をともなう症状を呈するものには、
エボラ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、コンゴ出血熱などがあります。
エボラ出血熱は、エボラウイルスに感染することによる、急性熱性疾患で
1976年に確認されてから、大きな流行が、何度か発生しています。
ウイルスに感染すると、2日から21日の潜伏期間ののち、
発熱、倦怠感、筋肉痛、嘔吐、下痢などの症状を併発し、
症状が進行すると、皮膚や目、消化管などから出血をおこします。
死亡率は50~90%といわれ、有効な治療法はありません。
2013~2015年の、西アフリカ一帯での流行では、
1万人以上の死者を出しました。
先ごろ、アフリカ・コンゴ共和国で、大きな感染拡大があり、
すでに200人以上の死者が出ています。
コンゴ政府によれば、過去最悪のペースだということです。
エボラウイルスは、コウモリなどの動物の体内に生息しています。
コウモリや、コウモリに咬まれてウイルスに感染した、
サルなどの野生動物や家畜に接触することで、人間にも感染が広がります。
罹患した患者の血液や体液にはウイルスが含まれ、
体液や体液が付着した医療機器に振れることで、
さらに、人から人へと、感染が広がるのです。
治療スタッフも大変です。
熱帯の暑さから、防護服は長時間着ていることが難しく、
病院の設備も脆弱です。
現地の人たちの、防疫や保健衛生に関する無知も、感染拡大の原因です。
患者の血液などに含まれたウイルスは、それに接触した人の粘膜や、
ほんの小さな指のささくれからも侵入して感染します。
亡くなった患者の体を素手で洗うなどの、現地の葬儀の風習も、
感染拡大に拍車をかけているといいます。
かつて、世界中に広がった天然痘ウイルスは、20世紀に根絶されました。
有効なワクチンが開発されたことが最大の理由ですが、
エボラ出血熱とは異なる条件がありました。
天然痘ウイルスは、人だけに感染する疫病だったのです。
エボラ出血熱のように、野生動物の体内にある場合は、
根絶することは相当難しいといえます。
人から人への感染を食い止めたとしても、ウイルス自体は自然界に存在し、
流行が一旦収束しても、また次の流行がおこる可能性があるからです。
流行を止めるためには、
感染が疑われる野生動物に近づかないことが必要なのですが、
森林伐採がすすんで、野生生物との距離が近くなっていることに加えて、
現地では、コウモリやサルなどの狩猟が常態化しています。
つまり、エボラ出血熱の流行は、
衛生問題というよりは、環境問題や食糧問題なのです。
人口が爆発的に増加するアフリカ大陸において、
有効な食糧問題を解決できなければ、
あるいは未知のウイルスによる、疫病の発生は、避けられないでしょう。
人類全体の叡智が求められます。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。