こじれた不動産物件はプロでも難しい
よしをです。
不動産の再開発がすすんでいます。
駅周辺の地区は、高層ビルの建設ラッシュで、不動産価格も高騰しており、
一部では、バブル期を彷彿させる、地上げもおこなわれているようです。
そんな名古屋駅周辺の不動産状況について、
気になるニュースを見つけました。
場所は、名古屋駅から徒歩15分ほどの場所で、
10棟並びの、それぞれ2階建ての、古い長屋です。
この長屋は、数年前に、当該不動産(土地、建物)の所有者が代わり、
かなり強引な地上げが行われた結果、10棟中、7棟が退去し、
残りは3棟になりました。
現在も、地上げ業者により、空き家となった隣家の、
玄関口や窓ガラスが破壊されるなど、退去に応じない住民に対して、
業者の嫌がらせが続いているというニュースでした。
このあたりは戦災にも遭っていないそうで、
当該の長屋は、築90年になり、さすがに建物は古くなりましたが、
映像を見る限り、すぐに倒壊する状態ではなさそうです。
ニュースでインタビューされていた住民のひとりによれば、
住民は、親の代から、この長屋に住み続けていて、
本人も高齢になり、いまさら他所に引越ししたくないということでした。
長年、住み続けた家を離れるのは辛いと思いますが、
その先の事情を冷静に聞いてみると、
同じく、賃貸物件を所有する者として、
正直なところ、この物件の所有者に同情したくなるような内容でした。
この長屋は、もちろん借家であり、家賃は月18000円だということです。
古い物件であることを差し引いても、
名古屋駅周辺にあって、このような家賃は考えられません。
駅からの距離など、同じような条件の貸家を探すことは難しいでしょうが、
最低でも、家賃は月4~5万円にはなると推測します。
想像するに、この長屋では、年単位どころか、
数十年にわたって、家賃の改定がされていないようです。
破格の低家賃の家に住み続けている住民にしてみれば、
家への愛着以上に、経済的な面からも、
「この家を離れたくない」というのは、当然の意見でしょう。
一方、所有者にしてみれば、
「さすがに、もう立ち退きを了解してほしい」というのが本音です。
(嫌がらせ行為は問題外ですが…)。
なぜ、このようなことになるのかといえば、
前オーナーの努力不足(家賃の見直しがされていない)もさることながら、
借主が、借地借家法という、
借主保護の色彩の強い法律に守られているからです。
貸主と借主の間で、借家を契約する際には、
期間を定める場合と、定めない場合、いずれも認められています。
解約にあたって、契約期間を定めていない場合は、
貸主から解約申し込みをして、借主の了解を得る必要がありますが、
契約期間が設定してある場合でも、事情は同じです。
つまり、契約期間が終了すれば、簡単に解約できるというわけではなく、
解約するための「正当な理由」が必要になるのです。
「正当な理由」とは何でしょうか。
少し割愛しますが、借地借家法では、以下のように規定しています。
1.貸主が当該不動産の使用を必要とする事情があること
2.当該不動産がどのように使用されていたか
3.立ち退き料(1,2の事情を前提)
たとえば、建物が老朽化している場合、倒壊する危険があれば、
建て替えのための退去は、正当であると認められますが、
通常の使用に差支えがない状態であれば、
なかなか、建て替えが正当な理由と認められないのが実情です。
また、立ち退き料を払えば、即、退去可能といったものではなく、
あくまでも、賃貸双方が、金銭以外の事情(上記1.2)に関して、
合意したうえで、立ち退き料が発生するのが原則です。
いずれにしても、貸主と借主が協議をして、
退去するかどうかの合意をしなければ、退去ができないのです。
話がまとまらなければ、訴訟に発展するケースもあり、
最終的に、立ち退き料で合意できればいいのですが、
退去がかなわない場合もあるのです。
このように、契約がこじれた不動産の整理は大変ですから、
まずもって、ややこしい物件には手を出さないのが、投資家の原則です。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。