バリアフリーと天守閣
よしをです。
安倍首相が、G20サミットの夕食会で、
大阪城にエレベーターを設置したことを、「大きなミス」と発言し、
波紋を呼んでいます。
東京オリ・パラリンピックを控える大事なときに、
バリアフリー意識の欠如はケシカランというので、
安倍内閣の支持率低下を煽って、マスコミがバカ騒ぎをしています。
昭和初期に、昭和天皇の御大典記念として、
市民の寄付によって、再建築されました。
石垣は江戸時代のものですが、デザインは桃山時代のものを参考にしています。
また、本来の外壁は、漆塗りの黒壁ですが、
再建された城壁は、ペンキで白く塗られています。
安倍氏首相は、サミットの場で、「16世紀の姿を忠実に再現した」と話しましたが、
その点については、どうやら怪しいようです。
問題のエレベーターは、本体横に設置されています。
エレベーターが設置してある天守閣は、
大阪城のほかに、名古屋城、唐津城、岡山城、熱海城があるそうです。
それ以外の天守閣は、エレベーターが建物内部を貫通しています。
現在のコンクリート造りから、木造建築にすることを表明しています。
旧名古屋城は、第二次大戦で焼失しましたが、
オリジナルの設計図が残されているため、
江戸時代の姿を忠実に再現できるといいます。
しかし、エレベーターの設置のためには、
デザインの変更が必至であることから、市長は強硬に反対しており、
障碍者団体からの反発を受けているのです。
日本の城郭のうち、オリジナルの天守閣が現存しているのは、
備中松山城、丸亀城、松山城、宇和島城、高知城の12城だけです。
当然、これらの城には、エレベーターはありません。
姫路城や松本城に、景観を損なうような外付けのエレベーターを設置したり、
江戸時代から現存する階段を改修して、
バリアフリーを整備するべきという意見は、聞いたことあありません。
それはそうでしょう。
せっかく江戸時代から残る文化財が台無しです。
以前、わたしは、犬山城(国宝)を訪れたことがあります。
天守閣へは、靴を脱いで上がります。
オリジナルそのままの階段は、足幅が狭く、急角度で、
最上階へ登ることは、足の不自由な障碍者はもちろん無理で、
健常なお年寄りでも、かなり難しいと感じましたが、
階段を改修せよというクレームの声が上がったとは聞いていません。
つまり、問題の核心は、いくつかの価値観があるなかで、
どの価値観を優先するかということなのであって、
バリアフリーは必ずしも、万能ではないということなのです。
もともと、城の天守閣など、一般人が入るような施設ではないのですから、
わたしは、そこに登ることに、意味があるのかどうかも疑問に思っています。
建造物文化財には、立ち入りができない施設など、無数にあります。
法隆寺の五重塔や、東寺の五重塔は、登楼することはできません。
バリアフリー機能を整備することは重要です。
遊園地のような、アミューズメント施設だという認識なのだろうと、
想像するのです。
たしかに、時代考証も不確かな鉄筋コンクリート製の天守閣では、
遊興施設ととられても、無理はないとも思いますが…。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。