天然痘撲滅に学ぶ点はあるか
よしをです。
天然痘ウイルスは、
1万年ほど前のインドを発生源とし、感染は世界中に広がりました。
紀元前12世紀に古代エジプトを統治した、ラムセス5世のミイラに、
天然痘の痕跡が認められるなど、
この時点で、すでに、中東からエジプトまで拡大しています。
日本には中国を経由して、8世紀に仏教伝来とともに、到達しました。
流行の勢いはすさまじく、
「続日本紀」には、737年の大流行では、累々とした屍の山が、
道を埋め尽くしたという記録が残っています。
藤原不比等は4人の息子を天然痘で失い、
政治が停滞する事態になりました。
聖武天皇は、痘瘡(天然痘)根絶を祈念して、仏教に傾倒し、
その后である光明皇后は、兄弟4人を天然痘で失い、
その冥福を願って、法隆寺の夢殿を建立しました。
歴代天皇では、後醍醐天皇、後鳥羽天皇も天然痘に感染しました。
ヨーロッパでは、11~12世紀に、十字軍が中東遠征によって、
天然痘を持ち帰り、爆発的に感染が広がりました。
アメリカ大陸には、15世紀にスペイン人が天然痘を持ち込んで、
350万人の現地人が死亡し、インカ帝国の滅亡の原因にもなりました。
1663年には、人口4万人の北米インディアンの村を、
天然痘の流行が襲い、生存者わずか100名を残すだけという、
悲劇をもたらしました。
発生源のインドでも、たびたびパンデミックが起こっていますが、
1770年には、インド全体で300万人が命を落しています。
第二次大戦後の1950年にも、
全世界で5000万人が感染するパンデミックが発生しています。
天然痘の症状は、
最初は発熱や頭痛ではじまり、2~3日で発疹ができます。
発疹は水疱になり、罹患者の30%が死亡しました。
1798年に、ジェンナーが種痘を開発し、その後も改良を重ね、
発病しても、4日以内にワクチンと投与すれば、
重症化することはなくなりました。
その後、WHOはワクチンを世界に広げ、
1980年になって、人類は、ついに天然痘の撲滅に成功しました。
天然痘の封じ込めが成功したのは、いくつかの幸運があります。
まず、天然痘ウイルスは人間だけに感染し、
ほかの動物には感染しない性質をもっていたことです。
さらに、天然痘に感染すると、必ず決まった症状(発疹や水疱)がでるので、
症状のある患者だけを隔離し、治療すればよかったという点もあります。
また、天然痘ウイルスは突然変異しにくいという性質も、
撲滅するためには有利に働きました。
さて、日に日に猛威を振るって被害を拡大させている、
新型コロナウイルスですが、
撲滅するための条件は、非常に分が悪いといわざるを得ません。
まだわかっていないこともあるので、
あくまでも、現段階の情報を参考にしていますが、
どうやら発症率がそれほど高くなく、潜伏期間もまちまちなので、
患者を確定することが難しいという点があげられます。
発症前であっても、
患者が第三者に感染させるリスクがあることも、予防が難しい理由です。
また、ウイルスは変異しているという情報もあります。
中国では、武漢封鎖前に500万人が市内から脱出したとされ、
中国政府の封鎖作戦は、完全に手遅れでした。
日本にも、春節期間に、すでに数十万人単位の中国人が、
入国しているといわれています。
このなかに、どれぐらいの罹患者がいるのかも不明ですが、
二次感染の発症例も増えていることから、
すでに、水際作戦は破綻していると考えるべきでしょう。
専門家によると、流行のピークは、4~5月ごろといわれています。
これから、われわれができることは、
インフルエンザ対策同様の自己管理だけです。