美女か醜女か

よしをです。
三国時代の蜀を支えた諸葛亮孔明の妻・黄夫人は、
河南郡（現在の河南省）の名士・黄承彦の娘で、才知あふれる女性でした。
幼いときから勉学に励み、天文学や地理に精通し、文才もありました。
黄夫人は、一般的には、赤毛で色黒の醜女だったとされていますが、
諸葛亮はその才能を愛し、生涯を共にしました。

また一説に、黄夫人は容姿端麗だったという話もあります。
美貌であるが故、周囲に嫉妬されていたため、
黄夫人は、自らの容姿を疎ましく思っていたといいます。
諸葛亮が博学で、尊敬に値する人物であると耳にした黄夫人は、
諸葛亮との縁談の話がもちあがると、
父親に、自分の容姿がひどく醜いと伝えてほしいと提案します。
諸葛亮は、黄承彦から、「娘は醜いが聡明である」と伝えられると、
即座に、縁談を承諾したとされています。

諸葛亮との婚礼の日、
黄夫人は、わざと顔が隠れるほどの大きな赤い頭巾をかぶりました。
諸葛亮は、頭巾をめくると、あまりに美しい女だったために、
何かの間違いだと思ってその場を離れようとしたため、
黄夫人が慌ててかれを引き留め、
これまでの経緯をすべて話し聞かせたといいます。

諸葛亮のもとに嫁いだ黄夫人は、体が丈夫で手先が器用だったので、
力仕事から、こまごまとした手作業までこなしました。
また、知性と慧眼を兼ね備えており、
諸葛亮と飽きることなく歓談することができました。
諸葛亮が三顧の礼で劉備に仕えてからも、
黄夫人の内助の功と、ふたりの関係は変わることはなく、
ふたりは生涯、お互いを支え続けるパートナーとなりました。

残念ながら、この夫婦は子どもに恵まれなかったようで、
呉に仕えていた、兄の諸葛僅から養子をもらいました。
太閤秀吉とねね夫婦の関係に似たものがありますが、
ふたりの決定的な違いは、諸葛亮が生涯妾をもたなかったことです。

中国のある地方では、結婚式の際に、
花嫁が「紅蓋頭」とよばれる大きな赤い頭巾をかぶる習慣があるそうです。
この赤い頭巾は、黄夫人の婚礼のもようを模したものであるという、
言い伝えがあります。

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