さあ来い 卒サラ!          ~悔いのないセカンドライフを目指して~

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かわいそうなソクラテス

よしをです。

喜劇作家アリストファネスは、喜劇「雲」にソクラテスを登場させています。

アリストファネスは、ソクラテスを、ひとを惑わす怪しげな詭弁者、

あるいは道徳を破壊する危険思想の持主として描写しています。

 

借金の返済に困っていた父親が、奇策を思いつきます。

ソクラテスは詭弁を弄して、

物事の正邪に関わらず、必ず議論に勝つ秘術をもっているといいます。

父親は、息子をソクラテスに弟子入りさせ、その無敵の弁論術を会得させて、

借金を帳消しにしてやろうと目論んだのです。

 

息子はソクラテスに弟子入りし、無敵の弁論術を手に入れました。

そして、計画通り、見事に借金取りを撃退しました。

父親は喜び、宴席を設けました。

息子に歌を歌わせようとすると、初めはバカバカしいといって断りますが、

再三頼まれると、息子はソクラテスから教わった、

近親相姦をほのめかす歌を歌い出します。

 

父親が息子を叱ると、息子は無敵の弁論術で反論し、

それどころか、父親を殴打する始末です。

息子は、父親を殴ることは正しいことだと主張しはじめ、

父親は、その無敵の弁論術に反論できませんでした。

怒り狂った父親は、ソクラテスの家に火を放つと、

焼け出されたソクラテスが慌てて外に飛び出し、物語は幕切れになります。

 

アリストファネスが描いたソクラテスの、ひとを惑わす詭弁者、

道徳の破壊者といったイメージは、それほど珍奇なものではなく、

その当時のギリシア社会で認識されていた、

一般的なソクラテス像だったと考えられています。

 

弟子のプラトンら、一部の理解者を除いて、

ソクラテスは、社会から、このような酷い誤解を受けていました。

したがって、かれは公開裁判において、

「国家に対して最上の奉仕をしているわたしに顕彰を与えよ」などと、

いわずもながの悪態をついて、陪審員の反発を招き、

最終的に、自ら毒杯を仰ぐことを選んだのかもしれません。

 

ソクラテスの刑死ののち、

アテネ市民は、不当裁判によって、偉大な人物を殺してしまったことを、

後悔したとされていますが、そんな話は大ウソです。

アテネ市民は、ひとりの危険思想の持主が処罰されたのだと、

溜飲を下げたことでしょう。

 

 

今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。