宗教と民衆蜂起の中国史
よしをです。
中国の王朝交代においては、
ほぼ例外なく、民衆蜂起が関わっています。
唐末の黄巣の乱などがありますが、
中近世では、宗教団体の扇動による反乱が目立っています。
白蓮教は、南宋時代に誕生し、清時代まで存在した宗教で、
廬山慧遠が創始した白蓮社に起源をもちますが、
白蓮教となったのは、南宋の天台宗系の僧・慈昭子元の創始によります。
当初から、秘密結社の色合いが濃く、
政府や既成宗教から異端視されていました。
元時代になると、革命思想の傾向が強くなり、何度も禁教令を受けました。
近い将来に、衆生を救うために、弥勒菩薩が降臨するという思想は、
王朝や皇帝を否定するものと受け取られたためです。
元末に、政治が乱れると、白蓮教の勢力は急速に拡大し、
韓山童を首魁とした民衆蜂起が発生しました。
叛乱軍は、目印に赤い布を身に着けたことから、紅巾の乱と呼ばれました。
托鉢僧あがりの朱元璋は、当初は白蓮教徒でしたが、
元を亡ぼして、明を樹立し、みずからが帝位に立つと、
一転して、白蓮教を弾圧しました。
明もまた、農民の叛乱(李自成の乱)で滅ぶと、
その清においても、19世紀になると、民衆の貧困から社会不安が高まり、
民衆の武力蜂起が相次ぎました。
とにかく、同じことを何度も繰り返すのが、中国の王朝末期の歴史です。
清末には、2つの宗教団体による叛乱が、相次いで起こりました。
またしても、白蓮教が大規模な農民一揆を扇動しました。
白蓮教は明時代の弾圧に耐え、
清時代になると、邪教として定着していましたが、
地下に潜行して、しぶとく勢力を拡大していたのです。
阿片戦争を経て、欧米列強に蹂躙されて、
ほとんど虫の息であった、清朝滅亡の決定打になり、
辛亥革命を招く、直接的なきっかけになりました。
1992年に、李洪志が創始した法輪経は、
中国の伝統的な健康法である気功と、
道教と古代仏教を組み合わせた修練法で、急速に勢力を伸ばしますが、
1999年になると、江沢民政権は法輪功を邪教として活動を禁止し、
弾圧をはじめました。
法輪功実践者の投獄は、数百万人に達するといわれ、
これまで4000人以上が獄死したといわれています。
ネットで法輪功を検索したり、書籍を所持、販売したり、
法輪功の気功を実践することは処罰の対象です。
2001年ごろから、
中国国内で、法輪功信者の臓器が売買されているという噂があり、
どうやら、噂にとどまらず、
実際におこなわれているという証拠が、いくつもあがっています。
中国政府は、経験則により、国を亡ぼす原因がなにかを知っています。
ひとつが遊牧民族の進入であり、もうひとつは、民衆蜂起です。
少数民族への弾圧や、宗教弾圧は、
その基本政策の一環でおこなわれています。
共産党独裁政権は、実質的に、歴代の帝国と変わるところはありません。
また、格差の拡大や官僚の汚職など、
過去の王朝と、まったく同じ社会問題を継承しています。
しかし、いくら取り締まりを強化しても、
15億人の民衆を力で黙らせることは、到底不可能なのです。
中国全土では、毎年20~30万件もの暴動が発生しています。
いまのところ、体制を揺るがすほどの規模には発展していませんが、
絶望的な将来を悲観して、キリスト教信者になる者が増え、
その数は、全国で1億人以上に達するという推計があります。
カリスマ的なキリスト教指導者が生まれたらどうなるのか。
中国は、時計のない時限爆弾を抱えているのかもしれません。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。