香港からの脱出先
よしをです。
華僑(あるいは華人)の歴史は、古くは唐代(8~9世紀)に遡り、
明代(16世紀)、清末期(19世紀)などに、
東南アジア各地への、中国人の大きな民族移動の波が起こりました。
華僑の多くは、社会の底辺部にいた人たちですが、
団結心の強いかれらは、
移住先で、同族や同郷出身者で構成される「幇」という組織を結成し、
ネットワークを広げて、社会的地位を向上させていきました。
現在、シンガポールやマレーシアなどでは、
華僑が、政治経済の中枢を掌握しています。
清代以降は、東南アジアだけでなく、
北米やオーストラリアにも、かれらの移住地域が広がり、
その地域において、アメリカのチャイナタウンに代表されるような、
独特の民族コミュニティを形成しています。
1997年に、香港がイギリスから中国に返還された際、
多くの市民が、香港を脱出しました。
かれらの移住先は、イギリスやオーストラリア、カナダ、アメリカといった、
英語圏が中心でした。
華僑の原点回帰現象とでもいうべきか、
現在では、東南アジアの中国語圏への移住希望が増えています。
中国返還当時と比較して、
東南アジア各国の経済発展がすすんでいることや、
預金額や滞在年数など、永住権や就労ビザを得るための条件が、
緩和されてきていることがその理由です。
そのなかでも、マレーシアと台湾の人気が高まっています。
台湾は中国語圏であることに加えて、
最短5年で、永住権が取得できることが魅力です。
マレーシアでも、一定額の預金額があれば、
容易に、長期滞在ビザを取得することができます。
両国を含む東南アジアは、香港と比較して物価水準は低いですから、
富裕層だけでなく、中間層の市民でも、移住のハードルは高くないのです。
今後、中国政府の圧力が高まれば、さらに移住熱はあがってくるでしょう。
香港は、東京都の半分の面積に、750万人が暮らしています。
生活費は日本とほぼ変わらないか、高いぐらいです。
香港の中心部などで、自宅マンションを購入するとなると、
1億円以上するといわれていますから、
住宅事情からいえば、日本よりも物価が高いかもしれません。
もし、香港で、一国二制度が撤廃されるようなことになれば、
不動産の個人所有も、認められなくなります。
香港に住む中間層以上の市民が、もっとも恐れるのはその点です。
条件が整えば、日本へも移住の目が向くかもしれません。
これは、香港人だけでなく、中国人も同様ですが、
圧倒的に治安がよく、教育制度が整い、
医療機関も最高レベルにある日本への憧れは、
われわれ日本人が考えるよりも、数段高いものがあります。
個人的には、大変困ったことだと思っていますが、
日本では、永住権がなくても、不動産は購入できます。
したがって、外国人がさかんに不動産投資をしている現状がありますが、
移住となると、話は別です。
問題は、言葉の壁と、永住権取得のための条件が厳しいことです。
言葉やコミュニケーションに関しては、
東南アジアと違って、日本の中国コミュニティは大きくなく、
中国語だけで生活することはできません。
永住権取得に関しては、
日本政府は、今のところ、外国人の移住自体を否定していますが、
今後、日本の国内事情が変化すれば、
一気に香港からの移住者が増える可能性はあると思います。
富裕層だけ移住して、日本社会に同化してくれれば受け入れたいが、
治安悪化の原因ともなる、チャイナタウンはお断りしたいというのが、
一般的な日本人の偽らざる思いでしょう。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。