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リクルート事件とテレビ局

よしをです。
1988年、朝日新聞リクルートの買収疑惑をスクープしました。
創業者・江副浩正氏が、
グループ企業である、リクルート・コスモス社の未公開株を、
政治家に譲渡していたという事件です。
値上がり必至の株を、店頭公開前に譲渡する手口で、
政治家に利益供与をおこなった疑いがもたれていたものです。

その後のマスコミの調べで、中曽根康弘前総理をはじめ、
竹下登総理、宮沢喜一副総理、安倍晋太郎自民党幹事長など、
90人を超える与野党議員に、
コスモス社の株が、譲渡されていたことが発覚しました。

事件発覚後、かつてはロッキード事件の追及にも関わり、
国会における当事件追及の急先鋒であった、
楢崎弥之助衆議院議員に対して、
リクルート側が口止めのために現金を渡す様子が、
日本テレビのニュース番組で全国放映され、大きな衝撃を与えました。

当時の日本テレビの記者の証言によれば、
楢崎氏は、リクルート・コスモス社の松原弘社長室長から、
これまで再三にわたって、現金授受のアプローチがあったといい、
この記者に対して、「贈賄を立証したいので、協力して欲しい」旨の、
相談があったといいます。

日本テレビは、楢崎氏の自宅に隠しカメラを設置し、
贈賄工作の決定的瞬間をとらえようと、松原室長の来訪を待ち構えました。
楢崎氏の議員勤続25年のお祝いの品として、
松原室長が出した封筒の中から、現金の札束が5つむき出しになり、
テレビカメラに収められました。

「米俵を雀の前においても、雀は小さいから一粒一粒しか食べられない。われわれは、身分相応の生活をしなきゃいかん」。
楢崎氏は、尾崎紅葉の「金色夜叉」の一説で松原室長を諭し、
現金を突き返しました。
この模様は、日本テレビの夕方の全国ネット「ニュースプラス1」の、
トップニュースで扱われました。
リクルートによる政界工作の、まさに決定的瞬間の取材に成功しました」。
徳光和夫キャスターが、独特の調子で興奮しながら伝えました。

当時も、この取材には、賛否両論があったといいますが、
テレビ局のニュース取材の手法として、
隠しカメラによる、まるで美人局(つつもたせ)のような「おとり収録」が、
信義的に許されるのかどうかは、大いに疑問です。
テレビ局が社会正義を主張するのであれば、
カメラで撮影した犯罪行為をゴシップとしてテレビで放映する前に、
検察に通報すべきだと思います。

リクルート事件において、中曽根、竹下、宮沢らの大物政治家の疑惑は、
立件されませんでした。
リクルート・コスモス社の未公開株譲渡の目的が、
具体的に何を目的にしていたのか、
特定できなかったことが原因だとされています。
つまり、政治家にはコスモス株を額面価格で譲渡していますが、
株式公開後、値上がりするかどうかは、
事前に知ることができないため、賄賂とは認定できないというのです。

なぜ、リクルートは、楢崎氏に現金を渡そうとしていたのでしょうか。
議員ひとりを黙らせたところで、
別の野党議員が、代わって追及するだけのように思います。
この点について、
楢崎氏は、「爆弾男」の異名をとり、舌鋒鋭い、うるさ型の議員であり、
野党のマスコミ担当のような立ち位置にいたため、
リクルートは、かれを黙らせれば、
影響が大きいと考えたからだとされています。

「マスコミ担当」。
わたしは、取材手法の問題とともに、
楢崎氏とマスコミとの癒着についても、不愉快に思います。


今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。