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胸背(ヒュンベ)を眺める

よしをです。

刺繍は、朝鮮の代表的な文物のひとつで、
なかでも、ポシャギやチョガッポとよばれるパッチワークが有名です。

胸背(ヒュンベ)は、
李朝時代に製作された刺繍で、仕官の品階を示す装身具です。
ヒュンベは、その名のとおり、胸と背中の二か所につけるもので、
その人物の位に応じて、文様が厳格に定められています。

文官には孔雀や鶴、雁などの鳥類が、
武官には、麒麟や虎、イノシシ、鹿などの獣が刺繍で描かれ、
その周辺に瑞雲や不老草、牡丹などの長生文の刺繍が施されます。
大きさは、縦横20センチにも満たない、四方形です。

わたしも、2匹のユーモラスな虎の刺繍が施された、
武官用のヒュンベを、一点、所有しています。
大きさは15センチに満たない四方形で、
時代はよくわかりませんが、それほど古いモノではないので、
李朝末期(18世紀ごろ)の品と思っています。
装飾の少ないものなので、
それほど高位の官吏のものではなかったと思いますが、
刺繍の細かさには、注目すべきものがあり、
現代では、再現が難しいものだと思います。
額に入れて、自宅階段に飾ってあり、
わたしは、毎日、虎と目を合わせています。

一般庶民には、白い服装しか許されない朝鮮時代にあって、
刺繍を施し、染色された服装をまとっていた官吏は、特権階級でした。
特別な地位にいたかれらが、
このヒュンベを処分しようと考えたときの思いは、
どうだったでしょうか。
あるいは、没落した子孫が、これを処分したものかもしれませんが、
まさか、日本のこんな場所で、
額に飾られているとは思いもよらないでしょう。

わたしの手元にある、このヒュンベも、
わたしの子どもが成長したのち、古物への興味がなければ、
わが家から、またどこかへ旅立つ日があるかもしれません。

骨董を所有するというのは、
こういう不思議な因縁を、感じられるということでもあるのです。


今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。