さあ来い 卒サラ!          ~悔いのないセカンドライフを目指して~

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無宿人今昔

よしをです。
無宿人というと、木枯し紋次郎のような渡世人を想像しがちですが、
「無宿」であっても、渡世人とは限らず、
現代の戸籍台帳というべき、宗門人別改帳から抹消された者をいいます。
また、無宿だからといって無職ではなく、
住み込み労働者や、雲助(駕籠かき)なども、無宿人とされています。
無宿人には、勘当された町人や、犯罪者などのほかに、
江戸期にたびたび発生した飢饉によって耕作放棄した農民が、
多く含まれていました。

落語「髪結新三」の主人公(新三)は、
表看板は髪結ですが、裏では女をたぶらかす、ろくでもない小悪党です。
新三が大店の娘を誘拐するのですが、救出がままならない状況で、
親がヤクザの親分に仲裁を頼んでも、取り付く島もありません。
そこに、新三が住む長屋の大家が登場して、新三を説得するのですが、
大家の前では、希代のワルも、グウの音も出ません。
長屋を追い出されたら、新三は無宿者になってしまうからです。

幕府は、関八州で無宿人狩りをおこなって、
治安の維持とともに、労働力として利用することを考えました。
ソビエト連邦ラーゲリと同じ発想です。
火付盗賊改の長谷川平蔵は、
江戸湾の石川島と佃島の間の湿地帯を埋め立てて、人足寄場をつくり、
無宿人を収容しました。
ここに収容されれば、重労働が待っています。
新三も、人足寄場送りにされるのは、耐えられないと考えたでしょう。
江戸で高い治安が保たれていたのは、
このような厳しい治安維持政策のおかげであり、
一度道を踏み外してしまうと、真っ当な世界に戻ることが困難だということを、
江戸の人びとは理解していました。

現代の無宿人ともいえるネットカフェ難民は、
東京都内だけで、4000~5000人いるといわれています。
東京に緊急事態宣言が発令され、ネットカフェの営業自粛が決定しました。
ネットカフェから締め出された人びとの行き先について、
小池都知事は、12億円の補正予算を投じて、
ビジネスホテルなど、一時的な住居を提供するという声明を出しました。

一次的な救済は人道的に当然でしょう。
しかし、税金を投じる以上、江戸時代の人足寄場は論外としても、
もし、かれらが職を失ってしまったのであれば、
たとえば、増産が望まれるマスク工場で、深夜勤務で働いてもらうなど、
多少なりとも、社会に還元してくれる方法を考えてほしいものです。


今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。