社会構造の変化が起こっているのだ
よしをです。
政府はあえて開始時期を前倒ししてまで、
「GOTOキャンペーン」をスタートさせましたが、
首都圏を中心に武漢肺炎がふたたび増加傾向に転じたことによって、
東京都在住者を適用対象からはずしたり、
事前予約のキャンセル代を政府が負担するとか、
若者と高齢者の団体旅行への適用を除外するといった弥縫策の連続で、
泥縄の様相を呈しています。
国内の旅行会社は壊滅的な状況に陥っています。
観光庁の調査によると、
国内大手旅行会社47社の5月の取扱高は前年98%減少、
そのうち国内ツアーは96%、海外旅行は99%減少という結果でした。
このままの状況が続けば、旅行会社だけでなく、
旅館・ホテル、観光地の飲食業や航空会社などの観光業全般で、
倒産が相次ぐ可能性が高いでしょう。
政府としても旅行業へのなんらかの景気浮揚策が必然と考え、
7月の連休にあわせる形でキャンペーン前倒しに踏み込んだのですが、
その手法はあまりにも稚拙であって、
結論をいえば、せっかくの税金投入も砂漠に水です。
観光業に特化している事業者にとって、今回のGOTOは、
倒産時期の先延ばしにほかならないと考えています。
過去の歴史を振り返っても、
人の社会活動の変化によって産業の栄枯盛衰が起こっています。
たとえば弥生時代に中国から伝わった養蚕は、
江戸時代に諸藩が殖産産業として力を入れ、
明治時代には日本の輸出産業の主要品として興隆期を迎えましたが、
世界恐慌による海外市場の縮小や、ナイロンなどの代替品の普及によって
衰退していきました。
没落し、廃業した養蚕農家は、全国で数えきれないくらいいたはずです。
江戸時代、大阪は物流拠点として栄え、
淀川や堂島川の周辺には、
全国から集められた農産品や海産物を保存する蔵屋敷が並びました。
人や物資が集中して飲食業が発展し、
米への投機熱の高まりから世界初の先物市場も誕生しました。
明治になって、全国から大阪に物資が集まるシステムが崩壊すると、
渋沢栄一は繊維産業に着目し、大阪の基幹産業に育てました。
その後、大阪の基幹産業は繊維から電器や重工業に代わりましたが、
それらの製造業も衰退期に入り、三洋電機はパナソニックに吸収され、
シャープは外資企業の傘下となって、多くの退職者が生まれました。
そして、ついこの前から、
大阪の基幹産業は、インバウンドを中核とする観光業にシフトしました。
武漢肺炎の流行は、日本だけでなく世界全体の社会構造に、
激変を余儀なくさせるでしょう。
歴史が語るように、
社会構造の変化による産業の栄枯盛衰は不可避であり、
観光業の衰退とて、特段珍しい出来事ではないのです。
現在観光業に携わっている多くの事業者にはお気の毒ですが、
観光という産業自体が衰退期に入ったと理解すべきだと思います。
機を見て方向転換する企業や事業者は生き残ることができます。
そもそも外国人旅行者頼みの収益構造が異常だったのだと、
今さらながら自覚すべきなのでしょう。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。