AIIBの現状
よしをです。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)は、
2015年に発足しました。
2019年12月現在で、加盟国・地域は100に到達しました。
先進7か国(G7)では、アメリカと日本だけが、AIIBに未加盟です。
日米主導で1966年に設立された、
アジア開発銀行(ADB)の加盟国・地域は67ですから、
AIIBへの参加国は、それを上回り、
先進国も、途上国も、こぞって潤沢なチャイナマネーに群がりました。
日本の現時点での不参加のおもな理由は、
AIIBが、国際金融機関として、
公平性や透明性が確保されていない懸念を抱いていることです。
さらに、背景には、加盟することのメリットが乏しいこともあり、
「日本も加盟すべき」、という声も、最近はあまり聞こえなくなりました。
AIIBの議決権は出資額に比例し、中国が単独で約30%を保有しています。
AIIBでは、重要案件の議決は、75%以上の賛成が必要です。
したがって、中国は事実上、拒否権を有していることになります。
これまでAIIBが承認した投資案件は約40件で、
これを世界地図に描くと、
そのまま、中国の巨大経済構想「一帯一路」にトレースできます。
中国は、日本とアメリカにAIIBへの参加を求めています。
ADBの運営ノウハウを必要としているからなのですが、
AIIBの経済活動が、中国の世界戦略と一致することについて、
日本とアメリカは、拒否反応を示しています。
AIIBが承認した融資額は、累計120億ドルになりますが、
実際に融資されたのは、20%以下にとどまっています。
しかも、融資の多くは、世界銀行やADBのプロジェクトに相乗りする、
協調融資の形をとっています。
つまり、現状において、世界の金融市場では、
AIIB単独では、信頼性を欠くという評価しか得られていないのです。
ADBは、加盟国企業にのみ、プロジェクトへの入札資格を与えていますが、
AIIBは、非加盟国の企業にも、門戸を開放しています。
したがって、日本企業にとって、
日本がAIIBに加盟するかどうかは、さほど重要ではありません。
むしろ、途上国のインフラ整備では、
日本企業には豊富なノウハウがありますから、
今後は、むしろAIIB側から、日本企業の参加を求めることになるでしょう。
残念ながら、AIIBは、中国の世界戦略のための金融機関という、
マイナスイメージを払拭できません。
現在の中国には、豊富な資金とマンパワー、
工作機械などのハード面は整っていますが、
経験値とソフトパワーが、決定的に発展途上です。
世界のインフラを担うには、まだ役者不足ということです。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。