李朝の珍品2点
よしをです。
李朝の陶磁器の珍品に、乳瓶(にゅうびん)というものがあります。
白磁の10~15センチほどの瓶で、
ざっくりと6面程度の面取りがされています。
子どもを産んだ母親が、母乳がたくさん出ることを願って、
初乳を絞って瓶に入れ、儒教の祠に収めたものだといわれています。
屋外に置かれたものであり、
また、以前お伝えしたように、
かの国では、器物を大切にする風潮がないので、完品はほとんどなく、
残っているものは、首(注ぎ口)が飛んでいるものがほとんどです。
あるいは、首を割ってから祠に収める風習があったのかもしれません。
ほとんど現存する古物はなく、珍品中の珍品だといわれています。
地方には、今でも風習が残っているようで、今出来のものはありますが、
偽物が多い瓶でもあります。
一度だけ、銀座の有名店で、
口辺をぐるりと金直しした、キズだらけの乳瓶を見たことがありますが、
50万円の値段がついていて、とても手が出ませんでした。
今度、見つけたら、無理をしてでも入手したいと思いますが、
おそらく見つけるのは、難しいと思います。
これは、亡くなった人に対して、
その功績をたたえる内容が、漢字で記された焼き物で、
白磁の板に、コバルト(群青)で文字が書かれています。
なぜ、こんなものがあるのかというと、
明治以降、日本統治時代に、墓から掘りおこされ、
日本に渡ってきたものなのです。
実は、これ、わたしは1枚持っています。
サイズはA4ぐらいで、7~8センチの厚みがある白磁器です。
記された日付により、18世紀前半の品であることがわかっています。
骨董店で、これを発見したときには、思わず声が出ました。
すでに、どういう種類の陶磁器かということは知っていて、
入手については逡巡したのですが、
忌み品でありながら、美術品としてのすばらしさに感じ入り、
その場で購入を決めました。
書かれた文章の流れから、これは単独のものではなく、
数枚綴りのうちの1枚であることがわかりました。
墓誌が収められたのは、ある程度、地位の高い人なのですが、
数枚に及ぶものは、かなり身分が高い人であることを物語っています。
貴族クラスのものだと推察しています。
コバルトの発色も見事で、コンディションも申し分なく、
美術品としては、見事なものだと思いますが、
外に飾ることは憚られ、書棚の奥の、桐箱の中に納まっています。
人の目に触れるべきではない、陶磁器ではありますが、
ときどき独りで家にいるときに取り出して、眺めることもあります。
ちなみに、李朝の陶磁器には、尿瓶や痰壺といったものもありますが、
さすがに、わたしはそちらには触手は伸びません。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。