個人書店を守ってほしい
よしをです。
日本の出版業界には、際立った特徴があります。
アメリカや西欧では、
書籍と雑誌では品目が異なり、流通経路も異なります。
欧米の書店では書籍のみを扱い、
雑誌は、ニューススタンドやキオスク、コンビニなどで販売しますが、
日本の書店は、書籍も雑誌もまとめて扱っています。
また、日本の出版業界は取次会社が寡占状態にあり、
日本出版販売(日販)とトーハンの2社が、流通をほぼ独占しています。
日販とトーハンは、新聞以外のすべての書籍を一手に扱います。
それぞれの書店は、2社のうちどちらかと包括契約を結べば、
国内の出版社のほぼすべての本や雑誌を、網羅することができるわけです。
本が一冊売れると、取次会社のマージンは8%、書店は22%で、
残りは著者の印税や、出版社の取り分になります。
書店における書籍の販売の基本は、委託販売です。
書店は仕入れた書籍のうち、売れ残りは返本することができます。
委託販売の最大のメリットは、書籍の多様性が維持されることにあります。
書店とすれば、あまり売れない本を陳列しても、最悪、返本すればいいのだし、
商品のバラエティが増えれば、客寄せにもなります。
要するに、書店、客ともにWINWINなわけです。
日販が中心になって、買取システムをすすめているようです。
現在、一部にある、買取書籍は、
絶対売れる本(ハリーポッターシリーズなど)のほかには、
おそらく、岩波書店の書籍だけだと思います。
小さな書店では、岩波文庫は扱っていないことが多く、また、置いてある場合も、
売れるまで棚にあるので、表紙が色落ちした本を多く見かけます。
もし、買取制度が主流になれば、業界全体に、さまざまな影響を与えます。
取次会社は返本コストを減らせることができ、最大のメリットを享受できます。
当然ですが、リスクが最も大きくなるのは、在庫を抱えることになる書店です。
出版社は、損得半々です。
これまで引き受けていた、返本による赤字がなくなるのはメリットですが、
赤字リスクが書店に移るため、出版社の取り分が少なくなる可能性があります。
書店は、リスク軽減のため、販売部数をシビアにみて、仕入れを絞りますから、
発行部数は、必然的に減少します。
ヒットが予想される作品についても、発売部数の現象は避けられません。
委託販売であれば、平積みされるような売れ筋の書籍は、
売れれば、追加発注されて、どんどん積まれますが、
買取の場合は、売れた分だけ山が低くなり、
完売すれば、それでおしまいです。
遅れてきた需要は、古本屋が吸収することになるでしょう。
なにより、ヒット作をもたない中小の出版社は、
大打撃を受けることになります。
ヒット作品をもつ著者にしても、収入が減ってしまいます。
われわれ顧客にとっても、
書籍のバラエティを奪われるのは、大きな不利益です。
取次会社にメリットがあるとはいえ、
総じて、買取制度は、業界やユーザーにとってもマイナスの影響が大きく、
これまでは、あまり推進されてきませんでした。
ところが、ここへきて、買取制度が注目を浴びるようになりました。
その原因は、小規模の町の書店が、チェーン店の攻勢で数を減らし、
書店の発言力が落ちたことによります。
畢竟、取次会社の利益が優先されやすくなったのです。
紙の書籍がWEB書籍に移行しつつあることや、
アマゾンなどのネット販売が強大な力をつけ、
実店舗の売上を奪っているという現状もありますが、
ひとりの書店ファンとして、
取次会社には、日本の書籍の多様性を守ってほしいと思います。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。