十八番(おはこ)の由来
よしをです。
「十八番」と書いて、「おはこ」と読みます。
その謂れはいくつかあって、
歌舞伎で、初代から四代目までの團十郎が、
それぞれ得意としていた荒事の18の演目を、
七代目市川團十郎が選んで、「歌舞伎十八番」と呼んだことから、
芸事における得意芸として、
広く用いられるようになった言葉であるという説や、
阿弥陀如来が、仏になる修行をしているときにたてられた、
48の誓いのうちの十八番目が、
「念仏をする人たちを必ず救済する」であり、
これが、ほかの誓いよりも突出して尊いものだからという説や、
武士に求められる武芸十八般からきているなど、諸説あるようです。
なかなか興味深い説ですが、
芸事に関する言葉なので、わたしは、團十郎説が正しいように思います。
「おはこ」という呼び方については、
歌舞伎十八番の台本を、
箱に入れて大切に保管していたから、という説が有力のようです。
また、実際に記録に残るものとしては、
江戸時代後期の戯作者である柳亭種彦が、
1815年頃に記した「正本製(しょうほんじたて)」に、
初めて、「おはこ」という記載があるそうです。
その後、七代目團十郎が、
歌舞伎十八番を公開したのが、1832年のことなので、
「十八番=おはこ」は、この頃から広がった流行表現だったようです。
歌舞伎十八番は、
「外郎売(ういろううり)」、「嬲(うわなり)」、「押戻(おしもどし)」、「景清」、
「鎌髭(かまひげ)」、「関羽」、「勧進帳」、「解脱(げだつ)」、「毛抜(けぬき)」、
「暫(しばらく)」、「蛇柳(じゃやなぎ)」、「助六」、「象引(ぞうびき)」、
「七つ面」、「鳴神(なるかみ)」、「不動」、「不破」、「矢の根」の、
合計十八題です。
このうち、「外郎売」では、劇中での、外郎売の長口上が有名です。
口上を述べるには、8分ほどかかるそうで、
俳優やアナウンサーの研修などで、
発声練習や活舌の練習に使われているそうです。
現代日本で、歌舞伎十八番がこのような活用をされていると知ったら、
七代目團十郎は、どう感じるでしょうか。
なお、外郎とは、
本来は、小田原の外郎家が製造する飲み薬のことを指し、
和菓子の外郎は、苦い薬の口直しのために出されたと伝えられています。
こちらも、面白い由来です。
200年前の流行語が現代まで残っているというのは、実に不思議です。
しみじみ、日本語は、奥深いと思います。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。