さあ来い 卒サラ!          ~悔いのないセカンドライフを目指して~

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美意識とメラニン色素

よしをです。

 

五代目古今亭志ん生の「黄金餅」に、

ある男が、目を使うと減るので、片目づつ使おうとして、

片目をつぶって生活していると、やがて目が弱ってきたので、

今度は、もう片方の目を使って周囲を見ると、

知っている人がいなくなった、というマクラがあります。

 

わたしは、子どものころ、

自分と他人が、同じものを見ているかどうか、

不安になったことがあります。

落語のような話はないでしょうが、

それでも、少なくとも、「色」や「質感」に関しては、

個人差があるように思います。

 

たとえば、電気店に並んでいるテレビの画面の色に、

微妙な濃淡の差があるように、

人間の目の見え方には、個人差があって、

自分が見ている赤色は、

別の人の目には、もっと鮮やかな、

あるいはもう少し淡い赤色に、

見えている可能性があるのではないかと思います。

 

したがって、人の美意識というのも、

実際に自分に見えている色彩の違いに左右されるはずです。

それは、たとえば、服を選ぶ場合ならば、

「もう少し淡い色が好み」、

といった、好みの差に現れるでしょう。

 

李朝陶磁の頂点である、白磁について。

李朝白磁は、白い陶土で形成し、

透明な釉薬をかけて焼成します。

陶土の素地は、初期には、鉄分の少ない白色粘土が、

後期には、陶石を砕いたものが用いられました。

釉薬には、微妙な金属分が含まれるので、

還元焼成すると、鉄分はコバルトに、淡く発色し、

焼成温度の違いによって、器体の質感が変化します。

ちなみに、鉄分の多い釉薬を使ったものが、青磁です。

 

初期の李朝白磁は、乳白色で柔らかく、

時代が下がるにつれて、

青みが強く、硬く透明な質感に変化していきます。

この微妙な色合いや質感を楽しむというのは、

日本人固有の美意識であり、

作陶した韓国人には、ほとんど理解できない感性です。

 

江戸時代中期になると、

幕府から豪奢禁止令が出され、華美な色彩が禁止され、

庶民の着物は、

素材は麻もしくは綿、色は、茶、ネズミ、藍のみとされました。

これでは、国中が、ユニフォームになってしまいます。

しかし、他人とは違うものを身に着けたいという、

江戸庶民の欲求に応えるように、

職人らは、色をかけ合わせるなど、試行錯誤して、

茶色や鼠色のバリエーションを発明しました。

これが、「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃくひゃくねずみ)」です。

 

「四十八」とありますが、

茶系統と鼠系統も、100以上のバリエーションがあり、

それぞれ、名前がつけられています。

たとえば、茶系統では、「江戸茶」、「團十郎茶」、「利休茶」など、

鼠系統では、「銀鼠」、「梅鼠」、「錆鼠」などがあります。

 

これらの色彩は、決して華やかではありませんが、

日本の色彩に、微妙な質感の変化をもたらしました。

粋で洗練された、日本文化の真骨頂です。

 

ちなみに、ある研究報告によれば、

メラニン色素量の違いから、

青い目の白色人種は、

黄色人種よりも、明るさを強く感じるそうです。

したがって、かれらは部屋が多少暗くても、平気なんだとか。

 

 

今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。