黒死病の時代
よしをです。
ペストは、ヨーロッパでは黒死病ともいわれ、
腺ペスト、ペスト敗血症、肺ペストの3つの形態があります。
病原菌を媒介する動物からの一次感染と、
患者の呼吸飛沫によって、二次感染することが知られていて、
二次感染の広がりによって、パンデミックを引き起こします。
感染後、一週間以内の潜伏期間があり、
治療しなければ自然治癒することはほとんどなく、100%死に至ります。
西欧で、黒死病として恐れられたペストは、
ネズミを媒介して感染するとされていましたが、現在は、
ヒトに感染するノミと虱が原因であることがわかっています。
ペストのパンデミックは、記録の残るものとして、
紀元540年ごろ、東ローマ帝国での流行が伝えられています。
その後、散発的に流行がみられましたが、
14世紀の中国大陸で発生したペストは、
中国の人口を、50%以下に減少させる猛威を振るったのち、
中央アジアを経由して、ヨーロッパに上陸しました。
この感染域の拡大の原因は、
中央アジアからヨーロッパに運ばれた毛皮についていたノミが、
媒介したものだといわれています。
この大流行では、地球規模で、およそ8500万人、
ヨーロッパ全土で3000万人が死亡するという、
史上最悪の事態になりました。
現在では、有効な抗生物質の発見により、治癒が可能になり、
ほとんど、大規模な感染事例は見られなくなりました。
それでも、2000年代に入ってからも、
ときどき流行が見られるそうで、
2010~2015年では、世界中で3200人の患者が報告され、
600人近くが死亡しています。
日本でのペストの流行は、1899年のことで、
台湾から門司港に入港した日本人が発病・死亡したのを発端に、
その二週間のうちに、感染が拡大して、
神戸、大坂などで、40人が死亡しました。
その後、1907年に患者数は600人を越え、
ピークを迎えましたが、
1926年に2人の患者が発生したのちには、
日本国内での感染の報告は、なくなりました。
西欧では、ペストは社会問題であり、
ペストの流行を題材とする文芸作品も、多く生まれています。
有名なのは、ボカッチオ作の「デカメロン」ですが、
シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」でも、
ペストに関するエピソードが、語られています。
アルベール・カミュの「ペスト」は、わたしの好きな作品です。
ペストが流行するアルジェリアの都市を舞台に、
民衆の団結と不条理な現実を見つめた、カミュの傑作です。
この作品では、登場人物が、
射殺された男の話を耳にするくだりが出てくるのですが、
これは、「異邦人」で、
主人公が射殺したアラビア人を想起させるほか、
別の登場人物による、カフカの「審判」についての言及があるなど、
凄惨な、ペスト流行のストーリーのなかに、
いかにもカミュらしい伏線が用意してあるのが、面白い演出です。
人間の活動と伝染病の関係性について
語ろうと思っていたのですが、話がそれました(汗)。
きょうは、ここまで。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。