「なおみ」と「NAOMI」
よしをです。
テニスプレイヤーの大坂なおみ選手が、
日本国籍を選択したそうです。
彼女は、日本人の母と、
ハイチ系アメリカ人の父の間に生まれました。
見た目は、日本人とはかなり異なり、
ほとんど、日本語が話せない大坂選手ですが、
日本人として親近感を覚えるのは、その名前でしょう。
これは、NBA選手の八村塁選手にも共通する印象です。
もっとも、八村選手は、日本語がネイティブですが…。
しかし、大坂選手の、「なおみ」というファーストネームは、
日本語から想起する、「直美」や「尚美」ではなく、「NAOMI」です。
モデルのNAOMI・キャンベルや、
ハリウッド女優のNAOMI・ワッツと同様に、
大坂NAOMIの命名には、
日本語に由来しない、共通する意味があります。
NAOMIという人物は、旧約聖書の「ルツ記」のなかで、
ルツの姑、ベツレヘムのメリメレクの妻として登場します。
ベツレヘムからモアブに行き、息子たちはそれぞれ結婚しますが、
その地で、夫も2人の子どもも死んでしまい、
NAOMIと、息子の2人の妻(オルパとルツ)が残されました。
NAOMIは、ベツレヘムに帰ることを決意し、
未亡人2人を、実家に帰そうとします。
オルパは、姑の忠告に従って、実家に戻りますが、
ルツは、NAOMIに同行して、ベツレヘムに行くことにしました。
ルツは、ベツレヘムでポアズと再婚し、
2人の間に、ダビデの祖父オベデが誕生しました。
NAOMIは、大王ダビデの祖父の義理の母という立場であり、
旧姓聖書のなかで、重要な役割を担っていたわけではありません。
あえて、NAOMIの最大の功績をいえば、
彼女は、ダビデが誕生するきっかけをつくったということです。
NAOMIは深い信仰心をもち、
嫁思いの心の優しい人物であったこと以外は、
ごくありふれた存在なのですが、
いまだに、ユダヤ教徒ならぬ、
おそらくは、キリスト教信者の欧米の女性に、
その名前をいただく人が多い理由を考えてみると、
NAOMIという名前の意味が、
普遍的に愛されてきたからだとわかります。
ヘブライ語で、NAOMIは、「幸せ」、「なごみ」を意味し、
フランス語やドイツ語でも同様に、
「幸せな」という形容詞になっているのです。
ダビデは羊飼いから身を起こして、サウル王に仕えますが、
サウルがペリシテ人と戦って戦死すると、
ユダヤ世界における、立志伝中の人物です。
後世の西欧社会において、DAVIDの命名が好まれたように、
NAOMIを命名する心情には、
彼女Iが、のちに、ダビデのような強烈な個性の人物を、
生み出すきっかけをつくったという、血族の継続の神秘性に、
伝統を重んじる西欧の価値観が、合致した結果ともいえるでしょう。
1970年に大ヒットしたポップスに、
「ANI HOLEM NAOMI(邦題はナオミの夢」という曲があります。
この歌を歌ったのは、
サビの部分で、「NAOMI COMEBACK TO ME」
というフレーズが、繰り返し唄われています。
「ナオミの夢」は、かれらが発表した3枚目のシングルですが、
この曲があまりに売れすぎてしまった反動か、
この年に、デュオは解散してしまいました。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。