さあ来い 卒サラ!          ~悔いのないセカンドライフを目指して~

起業とか資格とか。趣味や思い出話など いろいろランダムに

千鳥とガマガエル

よしをです。
聚楽第豊臣秀吉の寝所に、曲者が忍び込み、
銘物「千鳥の香炉」を盗もうとしますが、
香炉の蓋につけられていた千鳥が鳴いて知らせ、賊は捉えられました。
この賊が、石川五右衛門でした。

実際には、五右衛門は、秀吉の寝所に忍び込んだわけではありません。
ましてや、のちに美化されたような義賊でもなく、
京や大阪を荒らし回り、強盗や殺人を繰り返した盗賊で、
手配中のところ、京都所司代前田玄以に捕縛されました。
五右衛門は、京都・三条河原で釜茹での刑になり、
一族郎党も、連座して、みな処刑されました。

処刑される前に、詠んだとされる五右衛門の歌は、
「石川や 浜の真砂は尽くるとも 世に盗人の種は尽くまじ」で、
「わが恋は よむとも尽きじ 荒磯海の 浜の真砂は よみ尽くすとも」、
という、古今和歌集本歌取り(パロディ)になっています。
恋歌をもじって時世の句にするとは、なかなかの教養をうかがわせますが、
本当に五右衛門が詠んだものかどうかは、わかっていません。
かれの所業から、そのような教養があるとは信じがたいので、
わたしは、のちに創作されたものだと考えています。

わたしが気になるのは、千鳥の香炉のほうです。
この香炉は、13世紀の南宋時代に龍泉窯でつくられ、
室町末期に伝来した、いわゆる砧青磁といわれる陶磁器です。
香炉の胴に三本の横のラインが入り、足は3本です。
見事な翡翠の発色と、ガラス質の表面に生じた貫入に、
趣深い上品さを感じます。
蓋には、片足を少しあげる仕草をした千鳥があしらってあります。
これが、秀吉に曲者の進入を知らせたという千鳥です。
千鳥はうしろを振り返り、誰かに話しかけているように見えます。
この香炉は、武野詔鴎が所有し、秀吉、家康へと伝来し、
尾張藩主・徳川義直に与えられました。
現在は、名古屋の徳川美術館に収蔵されています。

織田信長の所蔵していた香炉にも、面白い話が伝わっています。
それは、唐銅香炉の「三足の蛙(みつあしのかえる)」です。
三足の蛙というのは、青蛙神(せいあじん)という、
足が三本あるヒキガエルが、変化(へんげ)した霊獣のことで、
天災を予知する力があるとされ、縁起のいいものとされています。
この香炉は、本能寺の変の前夜に突然鳴きだし、
異変を伝えたとされているのです。
香炉の蛙は鳴き続け、
蜀江の錦で覆って、ようやく鳴き止んだといいます。

三足の蛙は、戦火を逃れて現存し、
京都・本能寺の宝物館で、公開されています。

ということは、この香炉は、本能寺の変の際に、
信長の傍にはなかったということになりますが…。
あるいは、自分だけ危険を予知して逃げたということなのでしょうか。


今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。