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憲法解釈と庶民感覚

よしをです。
西山事件は、1971年のアメリカとの沖縄返還協定に関して、
取材で知りえた機密情報を、国会議員に漏洩した事件で、
毎日新聞政治部の記者の名前を冠して、このように呼ばれます。

沖縄返還協定に関して、
アメリカ政府が支払うとされていた地権者への補償金を、
日本政府が肩代わりするという情報を、毎日新聞の西山記者がつかみ、
社会党の議員に漏洩しました。

政府は、当該の情報を否定するとともに、
西山記者は、外務省事務官(女性)に近づき、
不倫関係となって、機密情報を聞き出したとして、
女性事務官と西山記者を国家公務員法(機密漏洩、教唆)で逮捕しました。

報道の自由を盾に、取材活動の正統性を主張していた毎日新聞は、
世間の非難を浴びることになりました。
毎日新聞は、この事件をきっかけに、発行部数が減少し、
おりからのオイルショックによる広告収入減もあって、
まもなく債務超過に陥り、一度は倒産の憂き目をみるなど、
同紙の長期の低迷につながりました。

法律系の試験で、
西山事件憲法問題のテーマとして、多く取り上げられています。
争点は、報道機関が取材目的で公務員をそそのかす行為が、
報道の自由」によって保障されるかという問題です。

憲法の解釈は、
報道機関が秘密を漏洩するようにそそのかしても、
直ちに違法にはならず、
取材対象者の人格の尊厳を蹂躙するなど、その手段や方法が、
社会通念上是認することのできないものである場合は、
違法性を帯びる、というものです。

一般常識としては、
漏洩をそそのかす行為が、正当だとは考えづらいのですが、
憲法は、それを容認しています。
「取材」というものに、優位性を認めていることがわかります。
しかし、西山記者の行為は、女性の尊厳を蹂躙するもので、
社会的に是認できる手段ではないため、
正当な業務行為の範囲を越えているとして、有罪となりました。

なんとなく、すっきりしない決着です。
どこまでが、人権蹂躙になるのかが、よくわからないし、
その基準は、庶民感覚とズレているようにも思います。

省庁の事務官が、新聞記者と私的な接触をし、
ましてや不倫関係におよび、機密情報を漏洩するという行為には、
ある程度の主観性があるわけです。
薬物を使って自白されられたとか、強姦されて脅されたならともかく、
同意の上の肉体関係であり、お互いに既婚者でもあったのです。

実際におきていることは、法解釈よりも少々微妙です。
こうして考えをすすめていくと、ますます合格が遠く…(汗)。

憲法21条は、報道の自由を認めていますが、
取材の自由については、「尊重する」に留めています。
試験問題の場合、ちなみに、ここがポイントになります。


今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。