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骨董価格の下落は手放しで歓迎できない

よしをです。
かつて、中国の陶磁器や金属器は、収集家にとって高嶺の花でした。
それが、1980年代後半から、中国国内で開発ラッシュがはじまると、
中国全土のいたるところで、地面が掘り返され、
それこそ、捨てるほどの大量の発掘物が出てきました。

日本にも、中国骨董が波のように押し寄せ、
その結果、中国古陶磁の値段は、あっという間に暴落しました。
たとえば、紀元前後の漢時代の緑釉の壺などは、
1970年代であれば、300~500万円で取引されたそうですが、
現在では、コンディションのよいものでも、50万円ぐらい、
傷があったり、文様に面白みがないものなら、
10万円を切り、5万円程度でも入手できるものもあります。

また、アンダーソン土器に至っては、その希少性から、
かつては、500万円ぐらいで取引されていたものが、
現在は、1~2万円の値付けがされて、市場に出回っています。

以前の骨董のマーケットには、
骨董店で物品を入手した客が、10年、20年と楽しんで、
あるいは持ち主が代替わりして、
また、骨董店に品が戻ってくるというサイクルが存在していました。

そのように、顧客と店の間を、骨董がゆっくりとしたペースで回ることで、
マーケットは、常に物品のほうが少ない売り手市場となり、
ゆるやかにビジネスが回転します。
骨董品は、減ることはあっても、増えないのが大前提なので、
取引によって、物品が値上がりしていくのが基本でした。

しかし、昨今の中国からの骨董の大量入荷によって、
この古典的な骨董市場が、壊れつつあります。
また、東南アジアなどでも、開発の波が押し寄せ、
中国同様に、大量の発掘物が、骨董マーケットに参入するようになり、
骨董相場を破壊しています。

マクロな視点からいえば、日本のバイヤーの海外への支払いが増え、
国内の骨董マーケットから、資金が海外に流れることになります。
そうすると、国内のコレクターは、
自分がもっている骨董を、適正価格で換金することが難しくなります。
その結果、おおげさにいえば、
今後、国内のマーケットが、縮小していくと同時に、
骨董価格も下がってしまうという、
一種のデフレスパイラルに陥る可能性があるということです。

わたしの蒐集品のなかに、ペルシャ陶器の色彩鉢が数点あります。
12~13世紀、イラン北部もしくはアフガニスタンでつくられた、
直径20センチほどの色絵の軟陶で、
鹿や馬などの動物や霊獣の絵、花や幾何学模様が描かれ、
わが収集品ながら、実に見事なものです。
これが、10年ほど前に、わずか3~5万円で入手できたのです。

その理由は、戦争と貧困です。
わたしの蒐集品は、北部アフガニスタンの住民が、
国内の立ち入り禁止地区や、イランの遺跡に越境して潜入し、
大量に掘り出した陶器の一部で、
パキスタンからインド経由で、日本に輸入されたものです。

本来であれば、国外に流出してはいけないような文化遺産です。
後ろめたい気持ちはありますが、
せめて、日本のわたしの手元に置くことで、
破損から守ることができるのだと、
自分をいい聞かせ、代わる代わる取り出して、飾っています。


今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。