ベーシック・インカムは可能か
よしをです。
ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)は、
国民が最低限の生活を営めるだけの資金を、
国家が国民一律に支給するという制度です。
経済格差が拡大し、無人化や自動化といった労働環境の変化をうけて、
UBIは世界的にも注目を集めています。
すでに外国では社会実験がおこなわれています。
2016年にはスイスでUBIの導入について国民投票がおこなわれ、
フィンランドやオランダでは、小規模の実証実験がおこなわれるなどの
取り組みがされています。
イギリスやスペインは、UBIの検討や導入を発表していますが、
まだ現時点では、UBIを全面的に導入した国はありません。
日本では武漢肺炎の経済対策として、
全国民一律10万円の特別給付金が支給されましたが、
これは部分的なUBIの取り組みといえるかもしれません。
UBI導入のメリットはいくつかあります。
努力して収入を増やせば、その分豊かになるわけですから、
労働意欲は向上し、働き方改革もすすむと考えられます。
また少子化問題も解消する可能性があります。
以前、「子ども手当」の支給金額が親の収入によって違うのは
納得できないという話をしましたが、
平等を重視する日本社会では、一部の生活困窮者だけを支援する制度や、
収入格差によって支給金額に差をつける制度は不評です。
したがって、その点において、
UBIは日本社会との親和性が高い制度といえるかもしれません。
しかし、実際の導入については財源的に高いハードルがあります。
1回の特別給付金10万円の場合でも合計13兆円であり、
国家予算(約100兆円)の10%以上になりますから、
たとえば毎月10万円支給しようとすると国家予算を超えてしまいます。
以前、老後2000万円問題が注目されました。
老夫婦が生活を維持するためには、
年金以外に2000万円の貯えが必要だという仮説です。
このことにショックを受けた人も多かったと聞きますが、
わたしは不思議でなりません。
一般的なサラリーマンは60歳まで35年程度働いて、
65歳から年金を受給するわけですが、
平均寿命を80歳として、15年間年金を受給することになります。
35年間、給料のほんの一部を積み立てた分で、
現役時代と同程度の生活レベルを15年間維持するだけの
受給が得られることが現実的でないことぐらい、
常識で考えてもわかりそうなものです。
老後の生活は、年金だけで生活するために生活レベルを極端に落とすか、
年金以外の収入を得るか、貯蓄を切り崩すか、3つしか方法はないのです。
UBIの議論も、これと同じようなものです。
税制の仕組みを劇的に変化させて税収を増やさなければ、
制度を維持することができません。
かりに一律10万円のUBIが導入された場合、
年金を15万円支給していた人は5万円に減ることになるでしょう。
今回も、このブログを読んでいただき、ありがとうございます。